2020年11月号掲載「島の未来に繋ぐ金色のオイル」

2020/10/27



■三輪 智子(神奈川県出身)
 三輪 大介(福岡県出身)
ヤラブの木 yarabu tree


オジー、オバーへの恩返し

宮古諸島には自然由来の素晴らしい素材がたくさんあります。その一つで、今静かなブームになっているタマヌオイルの生産者「ヤラブの木」の三輪さんご夫婦を紹介いたします。

■タマヌオイルについて教えて下さい
タマヌオイルは宮古ではヤラブの木と呼ばれている、テリハボクという木の実から採れるオイルです。タヒチ語でタマヌと呼ばれるこの木から取れるオイルは南太平洋の島々で古くから皮膚疾患の治療薬として用いられてきました。ニキビや湿疹、乾燥肌や乳児のおむつかぶれにも使用されてきました。「ヤラブの木」のタマヌオイルは実を拾ってきて、池間島のオジー、オバーに殻を割って種子を取り出していだだき、数ヵ月間じっくりと乾燥させ直圧式によるコールドプレス製法で一滴一滴丁寧に抽出します。

■タマヌオイルとの出会いは?
私達は池間島で地域福祉を実践するNPO法人で活動していました。活動する中で、島に仕事が無く若い人達が島を出ていく、若い人力が無ければ島の環境は守れない、そして環境が悪化すると仕事が減ってしまう、という負のスパイラルを感じていました。島で何か産業を興さなければ池間島はどんどん過疎化していくと危機感を持っていました。そんな時、一緒に仕事をしていた人類学者の方から、島に自生するテリハボクからオイルが抽出でき、そのオイルが皮膚の疾患にとても効果があると聞きました。早速色々と調べ、これなら島にある自然を生かし、島の産業に繋がるのではないかと思い「ヤラブの木」を立ち上げました。テリハボクは防風林として植えられています。とても優秀な木で発芽率も良く、台風にも強い、海岸近くにたくさん植樹されています。そのテリハボクが負のスパイラルを逆回転してくれると思いました。構想に一年掛け、二年前に商品化しました。まず活動に必要な資金をクラウドファンディングで集め、そしてどうしても必要だった搾油をするための機械はトヨタ財団の助成金で購入しました。一般公募だったんですが、何の実績もない個人経営者の応募に資金を提供して下さったことには驚きと感謝です。木から落下した実をオバー達の自宅に届け、その殻を割って種子を取り出していただくのがオバー達の仕事です。体力が要らず、好きな時間に好きな所で作業をしていただけます。お喋りしながら、お茶を飲みながら、お隣のオバーちゃんとライバル同士で、どっちがたくさん割るかと競争しているオバー達もいます。機械で割れば効率がいいし、生産性も上がりますが、オバー達が一つひとつ丁寧に手で割って作られたオイルだというストーリーと、多くの島の人達が関わりを持てる産業の仕組みを作りたかったのです。私達はNPO法人で活動している時に島のオジーとオバーにたくさんの生活の知恵を教わりました。その知恵を子供達に伝えていくのが私達の活動でした。お味噌を作ったり、野草の料理の仕方、民具の作り方、とても興味深く楽しい活動でした。そのご恩返しと思っています。

■今後の活動、目標は?
現在商品はピュアオイルとボディオイルの二点ですが、来春から発売できるように日焼け止めを開発中です。タマヌオイルには天然のSPF効果もあります。その特長を生かした日焼け止めです。珊瑚に影響を与える紫外線吸収剤を一切使用していない環境に優しい、子供でも使用できる日焼け止めです。そして、池間中学校の生徒達と島の天然素材のみを使用した化粧水を12月から販売します。商品開発のきっかけは、中学校の総合学習の中で島に仕事を作るというテーマで授業をさせていただいていますが、「10年後、島で生活していることを想像出来ますか?」と尋ねたら、11人いる中学生の皆さん全員が「想像出来ない」と答えたんです。理由は仕事が無いから、「じゃあ自分達で仕事を作ろうよ、自分達の島にある、足元にある資源を使って仕事を作っていこう。」というのがきっかけです。今年で二年目になりますが、商品の企画会議から開発まで生徒達と切磋琢磨し、ようやく商品化しました。島の素材、アダンとアカバナ(ハイビスカス)、アロエ、月桃と鮫の肝油(スクワラン)が使われています。抗酸化、抗菌、保湿の効果があります。今回は三百本の限定販売ですが、継続した販売も考えております。現在商品の販売はネットと並行して、市内のホテル、雑貨屋さん、下地島空港にも置いていただいています。池間島の自然、生活環境に少しでも貢献していきたいです。

島の可能性を伝えるご夫婦の活動が池間島の未来に繋がると思います。10月末には第二子が誕生するご夫婦の今後の活動が楽しみです。