2018年10月号掲載「酒造りは人づくり」

2018/09/30


■山原 作栄 さん
株式会社 宮の華 工場長

国産米を原料とした「うでぃさんの酒」で三年連続、
ⅰTQⅰ(国際味覚審査機構)のシェフとソムリエによる食品・飲料評価で優秀味覚賞の三ツ星に認定された、株式会社宮の華の工場長、山原作栄さんにお酒造りに対する思いを伺って来ました。


■入社のきっかけは?
高校を卒業後、名古屋の製鉄会社に就職、クレーン作業等に従事していましたが、どうしても馴染めず、もう一度勉強し学校を出直してから再就職しようと思い一旦島に戻りました。
専門学校への入学を決め、入学まで時間があったのでアルバイトをしようかと新聞で探していたら宮の華酒造の求人が目に留まりました。地元にある会社で通勤の便がいいという理由で決めました。今から20年前のことです。

 

■入学を取り止め留まったのは?
一言で言うと二代目(下地盛良さん)に惚れました。
お酒造りの前に二代目を好きになりました。20年前、私の成人式のお祝いに来ていただいた時、私が母親に高圧的な態度で反抗したんです。すると、座っていた社長が立ち上がり、私のほほを叩いて叱りました。他人の子供のためにそこまで本気になれる人がいるのかと思いました。私は父親がいないので余計に感慨深いものがありましたね。学校に行く気が無くなり、この人の下で酒造りを学びたいと決心しました。二代目からは酒造りの前に人としてどうあるべきかを教わりましたが、今考えるとそれが全ての土台ですよね。入社後6年、二代目が亡くなられるまで多くの事を学ばせていただきました。

 

■工場長になられたのはいつ頃ですか?
去年の7月23日、私の誕生日に現社長(下地さおりさん)より工場長を任せたいと話がありました。
力不足でどこまで出来るか自信は無かったのですが、お受けしました。長が付くということは人より努力しなければいけない、人より成長しなければいけない、もっと成長しなさいというチャンスをもらったと思っています。
プレッシャーが無いと言えば嘘になりますが、一緒に働くみんなと共に成長していけるよう努力しています。
人間的には先代のようにあり、さらに自分の個性も磨ければと思います。

 

■酒造りに対する思いは?
私はお酒を造っているという表現は少し違うと思っています。あくまでも造っているのは微生物の働きです。
麹菌と酵母それに原料です。人間は微生物がうまく働いてくれる環境を整えることしか出来ません。自分が造っているんだ!自分が造っているから美味しいお酒が出来るんだ!とおごりが出てしまう、感謝の気持ちが薄れると見ているようで見なくなってしまう、五感を使った酒造りが出来なくなってしまうと思っています。
思いとしては、五感を使った酒造り、いつもと同じように造っていても何かが違うそれに気付けるかどうかですよね。私自身、酒造りはまだまだ分からないことばかりですが、生産者や機械のメンテナンスをして下さる方、たくさんの人の力がひとつになって美味しいお酒を造るということを忘れずに、飲んで記憶に残るお酒を造りたいです。

 

■県内初、国産米の泡盛を作るきっかけは?
社長からの提案でしたが、社員全員反対の中から始まった取組です。もちろん僕も反対しました。
勝手が分からず、ものになるかも分からないところからの挑戦でした。原料は熊本のヒノヒカリで、契約農家さんが無肥料、無農薬、無堆肥で大切に作った国産米です。
商品化には一年掛かりましたが、製造段階でタイ米とは違うと思いました。お米を蒸した時の香りが濃く、もろみになった時の発酵力が強い、絶対に美味しいお酒が出来ると思いました。「うでぃさんの酒」はどんなに製造技術が優れていても原料が良くなければいいお酒は造れない、当たり前のことですが、改めて痛感したお酒です。

 

■ⅰTQⅰについて
ベルギーで行われる食品・飲料の品質評価コンテストです。一流のシェフ、ソムリエが印象、外観、香り、味、余韻、五つの審査基準で審査し、総合評価90%以上で三ツ星をいただけます。運よく初エントリーで受賞、三年連続の受賞になりました。嬉しさと同時にこの品質を落としてはいけないという責任も感じます。今後は国産米泡盛の十年古酒の甕(かめ)貯蔵にも挑戦していきたいです。


山原さんの謙虚な姿勢、感謝を忘れない心の持ちように考えさせられる取材でした。大切に育てたお酒がたくさんの人の記憶に残るお酒になってほしいと思います。