雲を抜け、夢へ向かう

雲を抜け、夢へ向かう

本村 真一郎(もとむら しんいちろう)さん

日本トランスオーシャン航空株式会社
西辺出身

パイロットになってやる!

 宮古島に住んでいる方、来島されている方なら誰もが乗ったことのある飛行機。
今回は宮古島の真っ青な空に飛び立つ飛行機パイロットに憧れ、その夢を叶えた宮古島出身パイロットの本村さんにお話を伺いました。

■パイロットになろうと思ったきっかけ

 物心がついた頃から、夢はパイロットでした。小さな頃から飛行機が好きで、宮古島の空を飛行機が飛んでいる様子を見ては「バイバ〜イ、お土産買って来てね〜」といつも決まり文句を言っていました。
幼稚園生の頃、七夕の短冊にも「パイロットになれますように」と書いたことを覚えています。
しかし、年齢を重ねるにつれ、身近にパイロットがいなかったこともあり、自分には無理だろうと考えるようになりました。
 気付けば高校3年生になり、進路を決める時期にさしかかり、高校の進路相談室に行くと、偶然にもJTAの航空整備士の求人がありました。高卒でも航空整備士になれる道があることを知り、大好きな飛行機の側で働けるならぜひチャレンジしたいと思い、試験を受け無事合格し航空整備士として働くことになりました。
整備士として入社してからは、同僚と共に「一等航空整備士」と呼ばれる国家試験の勉強に励み、入社6年目で無事に合格し、JTAが運航するボーイング737型機の出発前の確認整備作業等の責任者(確認主任者)として運航に携われるようになりました。
確認主任者になってからは、自分の整備した飛行機がたくさんのお客さまを乗せて飛び回ることが嬉しく、毎日が充実しておりました。
 そんな折、いつもの様に出発する機体へ手を振っていると、コックピットから手を振り返してくれるパイロットの姿がとても輝かしく見え、小さな頃の夢が再燃し、「パイロットになってやる!」という気持ちになり、気付けば毎日のようにパイロットになれる方法を探していました。
探す中で、フライトスクールと呼ばれる、車の教習所のような民間の飛行学校があることを知りました。そしてたくさんのフライトスクールに問い合わせを行った中で、仕事をしながら通うことが出来るスクールが大阪にあることを知り、「これだ」と思い仕事をしながら大阪まで通い、訓練を始めることとなりました。

■パイロットまでの道のり

 航空会社のパイロット(エアラインパイロット)になるまでは、自家用操縦士・事業用操縦士・計器飛行証明・多発限定という四つの国家資格を取得後、各航空会社の採用試験に合格する必要がありました。
仕事をしながら、それも県外に通っての訓練でしたので、限られた時間の中で求められる知識や操縦技術を身に付けることが大変でした。
しかし、素晴らしい教官方に恵まれ、無事にフライトスクールを卒業でき、スクール卒業のタイミングで弊社の採用試験があり、大学生に混ざって筆記試験、シミュレーターでの技量適性試験、面接試験を受け、無事合格しパイロットとしてスタートを切る運びとなりました。
 パイロットとして入社後も限定変更試験と呼ばれる、ボーイング737型機に特化した操縦士の国家資格の取得が必須でした。
これまでの小型のプロペラ機での訓練とは違い、JET機は飛行速度やエンジンのパワーが凄まじく、操縦出来るようになるには時間を要しましたが、約1年をかけて座学やシミュレーター訓練、実機訓練を行い国家試験を受験、無事合格し、現在は副操縦士として乗務しております。
 実際に副操縦士として日々運航するにあたり苦労点は、四季折々、様々な天候の変化があることです。梅雨時は厚い雲の中を、レーダー画面を見ながら飛行して雷雲を認識・回避し、台風の際は激しい雨風を受けながら空を舞い、寒い雪の日は凍える機体に防除氷液を塗り、視界が悪い中、離着陸をしなくてはなりません。
そのため、常にその時々で運航に必要な勉強は必須です。しかし、苦労点でありながらそれが「やりがい」であることも事実です。

■宮古島への思い

 宮古島はとても大好きで、宮古島へのフライトの際はいつも特別な思いで乗務しております。本土発宮古島着の便は、観光客のお客さまが多いため、宮古島の良さを広められるよう、出来る限りアナウンスを入れて「個人的にオススメな観光スポット」などを紹介するようにしております。
 私は生活拠点が沖縄本島ですので、宮古島にお住まいの皆さまのように直接宮古島へ貢献することは出来ないかも知れませんが、一人でも多くの宮古島ファンを増やすことが出来るよう努めていきます。

■これからの目標

 これからの目標は「機長」になることです。機長になるには、副操縦士として、法律や社内規程で定められている以上の飛行経験・飛行時間を積み、「定期運送用操縦士」と呼ばれる国家試験に合格する必要があります。
とても難しい試験ですが、少しずつ努力を重ね、機長に相応しい知識・技術・精神力を身につけ、いつの日か機長としてフライト出来るよう日々精進します。

 日々各地を飛び回っている本村さんですが、いつか本村さんが機長を勤める飛行機に乗ることを楽しみにしています。

2023年9月号掲載